総領事からの挨拶

令和7年1月1日
*
新年あけましておめでとうございます。さて、昨年を振り返ってみますと、日本の地方自治体関係者の来訪が非常に多かったと感じています。日本とパシフィック・ノースウエスト(オレゴン州とアイダホ州)との間には26の姉妹都市関係がありますが、昨年はポートランド・札幌姉妹都市65周年、オレゴン・シティ・立科町35周年、フォレスト・グローブ・入善町35周年にあたり、それぞれ記念行事が開催されるなど日本から30の地方自治体関係者がオレゴン州を訪問しました。このうち、24の中・高・大学生グループがアメリカ人の家庭にホームステイするなど生の英語、アメリカ文化に触れることが出来て有意義な経験をしました。私もいくつかの姉妹都市会合に出席しましたが、日本の中学生が元気によさこい踊りを披露するなど大変盛り上がっていました。彼らが将来大人になってまた米国を訪れ、日米の架け橋になってくれることを祈っています。昔の話になりますが、戦前外務大臣であった松岡洋右は、中学時代、ホームステイしながらポートランドに留学し、その後日本人として初めてオレゴン大学法学部を卒業し政治家になりました。ポートランドのローン・ファー墓地に彼のホストマザーの墓が今も残っています。1933年、彼はジュネーブの国際連盟で有名な日本の国際連盟脱退演説を行った後、日本への帰路ポートランドに立ち寄り、ホストマザーの墓を訪れ、石碑を贈りました。石碑には「To the memory of Isabelle Dunbar Beveridge, raised by the loving hands of Yosuke Matsuoka in token of the lasting gratitude for the sympathy and gentile kindness of a woman who, next to his mother, shaped his mind and character. April 9, 1933」と書かれており、ホストマザーが彼の人生に強い影響を与えたことが分かります。これは、中学生のアメリカでのホームステイ経験が大変重要であることを物語っています。

昨年はまた、和食・酒のイベントが多い年でもありました。3月に当事務所は、ヒルズボローでなまこやほたてなどの日本水産物フェアを開催しましたが、5月はポートランド州立大学の日本研究センター、久世福、サケ・ワン、ズーパンが和食と日本酒のフェア「Kanpai Japan 2」を開催しました。8月には、日本とオレゴンのブリューワリーがコラボしたクラフト・ビールの祭典「Fuji to Hood」が大人気を博しました。さらに、宇和島市長、札幌市長、長野県知事等が来訪して愛媛県、札幌市、長野県等物産展が開催されました。昨年、和食に続いて日本酒もユネスコの無形文化財に指定されましたが、日本のソフトパワーである和食・日本酒の広報に引き続き努めて参りたいと思います。

個人的に昨年はパシフィック・ノースウエストの自然の美しさを堪能する多くの機会を得ました。オレゴン州では、潮干狩り、ブルーベリー農場視察、ワイン用ぶどうの収穫ボランティア、松茸狩り等を経験しました。アイダホ州では、モスコー、ボイジー、ルパート、ポカテッロ、アイダホ・フォールズ、トゥイン・フォールズ、ミニドカを訪問しましたが、トゥイン・フォールズのスネーク・リバー・キャニオンの雄大な美しさには感動しました。さらに、そこにかかる橋から人々がパラシュートを付けて飛び降りているのを見てびっくりしました。
ミニドカでは戦争中13,000人以上の日系人が収容されていた強制収容所跡地を視察し、日系人の苦難の歴史を肌で学ぶことが出来ました。松茸狩りを案内してくれたエミーさんという女性は日系3世で、彼女のおじいさんも戦前、私の前任者を松茸狩りに案内したことがあるそうで不思議な緣を感じました。パシフィック・ノースウエストには多数の日系人の方がおられますが、彼らは今でも日本や日本の文化に深い愛着を持っており、在留邦人と日系人がもっと多く交流を持つ機会が持てないかと考えています。

最後になりますが、パシフィック・ノースウエストにおられる8千人の在留邦人に対する質の高い領事サービスの提供及び安全の確保は、当領事事務所の最も重要な職務であります。コロナ禍で大幅に悪化した治安状況は2023年から改善傾向にありますが、未だにいろいろ不安を持たれている方も多いと思いますので、何かありましたら遠慮なさらず当事務所にご相談頂ければと思います。今年が皆様にとって良い年となることを祈念します。


 
*
*
*
令和7年(2025年)元旦
                           在ポートランド領事事務所
                           総領事  吉岡 雄三